①お金とは何か
「お金とは何か?」河童は、投資について考える前に、そもそもお金のことを学ぶ必要があると思った。
そこで、村中の人に尋ねてみることにした。
皆の反応は様々だった。
みな一瞬きょとんとした、顔をして少しバツの悪そうな顔をした。
何かしら、後ろめたいさが背中に覆いかぶさっているようだ。
そのためか、ほとんどの人が、「さあ」とはぐらかされてしまった。
わずかながら答えてくれた人もいたが、
その回答も満足とは程多いものだった。
「不浄なもの」
「争いの元」
「労働の対価」
「時は金なりというのだから、時間じゃないの?」
「にゃー」
そもそも、下から二つ目は命題の考え方を間違えているし、
最後なんて、猫に小判とはよく言ったものだと思う。
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そこで、河童は村で一番の財テクを持つ座敷ぼっこのもとへ向かおうと思った。
座敷ぼっこは、村の北にある大きな農家に住んでいる。
正確には自分の家ではないのだが、どうやらそこの家の住人には
家族の一員と思われているらしい。
もっとも、座敷ぼっこが、家族の中で子なのか、孫なのか、ひ孫なのか、親なのか
誰も知らない。誰もそのことに気が付くことができないのだ。
深夜に裏の生垣から、河童はそっと敷地に忍び込んだ。
セコムマークがついていないことは確認済みである。
すぐに座敷ぼっこは見つかった。
子供のような小さい影が、脚をぶらぶらさせながら縁側に座って月光浴を楽しんでいた。
河童は音を消して近づいたが、座敷ぼっこはすぐに河童に気が付いたようで、
こちらに向かって手招きをした。
さすが神や精霊とも呼ばれる存在だと、河童は感心した。
そのことを口に出すと、「なに、お主が生臭いだけじゃ」と
男のような、女のような、子供のような、大人のような声でいうと、くつくつ笑った。
河童はしかめっ面をして、
手土産に持ってきた縄で結わえた三匹の鮎をその顔に突き付けた。
「生臭いのは自分ではなく、この川魚のせいです」と抗弁した。
座敷ぼっこは「まあ、そういうことにしといてやろう」と言うと、再びくつくつ笑った。
河童は、座敷ぼっこの横に座り、ここにやってきた経緯を述べた。
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「なるほど、お主はお金について学びたいと。
うむ、儂のように数多の家を栄えさせ、
数多の家を滅ぼしてきた妖にはうってつけの話じゃの。」
河童は、座敷ぼっこの顔を見ながら口を開いた。
「人は揺り籠から、墓場までお金に縛られています。
生まれたときには、医者や看護師や使った施設のためにお金を払わなければ
なりません。そして、死ぬときも火葬や墓、無縁仏にしたとしても、
幾ばくかのお金がかかります。
お金がなくては、おちおち生まれることも、うっかり死ぬこともできないようです。
生きていくだけでも、衣食住。
それに加えて、旅行代、交際費等々、浮世とはいえ銭がどこまでも付きまといます。
それなのに、だれもお金について考えていないのは変だと思うのです」
(続く)
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